第1章 いつもの
リンスまで流し終わると、顔に乗っていたタオルで耳の縁や中を拭き取り、髪をぎゅって搾ってタオルで止めてくれる。
**「はい!しゅーりょー!」
坂本「ん、ありがと。んあー!気持ちよかった!」
**「それは何より(笑)」
そう笑って♪が風呂場から出ていく。洗濯機が回り始まる音がして、♪のスリッパの音が遠ざかると、俺も風呂を出る。
首にタオルをかけたまま、スエットのズボンだけでリビングに行くと、さり気なく冷えたグラスとビールが置いてある。
俺が何も言わなくても、♪はいつもそうしてくれる。
俺は♪に何もしてあげてないのに・・・。
グラスに注いだビールを飲み干してプハーってなって、うめーって叫ぼうとしてさっきの♪の言葉を思い出して声を抑えた。やっぱり俺がおっさんじゃ厭なのかな・・・。
そこへ、乾いた洗濯物を持って♪がリビングに入ってくる。
**「あれ?」
坂本「ん?」
**「まぁくん出てたの?いつもの「うめー!」ってやつ聞こえなかったからまだ入ってるのかと思った(笑)」
そう言って笑ってる。
坂本「なぁ♪。」
**「んー?」
俺のTシャツを畳みながら♪が返事をする。
坂本「俺の事・・・好き・・・?」
♪は振り向いて俺の顔を見ると、3秒経って噴き出した。
坂本「な、なんで笑うんだよ。」
**「だって、まぁくんが変な事言うから(笑)」
くっくっくっと♪はまだ笑いを堪えてる。
俺は真剣に聞いてるのに。