第4章 桜
ガチャリ、とドアが開く音がした。
「おかえり、ロー!桜見に行くぞ!」
「ちょっと待ってろ、今着替えてくる」
行く気満々のオトハは、今夜少しだけ冷えることをすでにチェック済みだったので、トレンチコートを羽織った。
「楽しみだな…」
付き合う前も何度か出かけていたが、こうして恋人同士として出かけるのは本当に数回しかない。
「待たせたな、じゃあ行くぞ」
いつも仕事で着ていく服装とは違い、休日用のかっこいい服に着替えたロー。見慣れないため、少しだけドキッとした。
ローの愛車である車体が低いスポーツカーに乗った。
「安全運転でお願いします」
「当たり前だ」
こっちを見てにやりと笑うローにまたドキドキする。
「俺の車だからな、傷つけるわけにはいかねェんだ」
「…そっちかよ」
期待を裏切るような言葉にがっかりしてぼそりとつぶやいた。その反応を楽しむかのように、ローはクスリと笑った。