第6章 乗せられて
拘束されたまま、口づけを落とされる。
「ん...」
荒く、貪るように。
「け.....ぃ」
怖い。
目の前に居る蛍が、蛍じゃないみたいで。
1度そう思ってしまったらずっと不安がついて回る。
「けい...」
目を見ようとしないのが。
名前を呼んでくれないのが。
強く握られたままの両手が。
荒く肌を這う舌が。
噛みつく歯が。
「こわ.....い」
不安の1つ1つが重なり、大きな不安の波となって押し寄せる。
怖いと思う度、不安に感じる度、胸の奥がキリ...と痛む。
胸が痛んだ数だけ、目にうっすらと涙の膜が出来る。
「え?」
バッ、と蛍が顔を上げたけど、どんな表情をしているのか、涙で霞む視界では分からなかった。
「怖い.....やめて...お願い」
ポロリと涙が1つ零れ落ちる。
1度零れてしまえば、次から次へととめどなく溢れ出す。
「波瑠、ごめん」
腕が解放された。