第6章 乗せられて
「ちょっと蛍」
「大丈夫だから、僕に任せて」
この状況で、何に対しての大丈夫なのか。
いつもと様子の違う蛍を怪訝に思う。
「蛍、私をからかうつもりなら...っ」
言葉の途中で身体を押され、バランスを崩した。
「からかうつもりなんかじゃない。
冗談でこんなこと出来る訳ないでしょ」
そんな命知らずなこと、と続ける。
ならば尚更なぜ...?
「ちょっと今の僕には余裕がない」
蛍は私の腰に腕を回すと、体重を私に掛けた。
ドサリ...とマットの上に身体が倒れる。
「っ、ちょ...」
そのまま脚の上に乗ると、腕を頭上で固定された。
拘束を解こうと力を込めてもビクともしない。
そればかりか、拘束する手はどんどん強くなっていく。
いくら私が鍛えていて強いと言っても、所詮は女だ。
女がどれだけ頑張ったところで、男の本気の力に正面から勝つなど、厳しい以外のなんでもない。