第7章 初演練 *水無月*
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彼女が自室に向かった後、残された審神者と刀剣男子達は静まり返っていた。それは、審神者の意図を察しているからだ
「主、この演練の真の意図はなんだ?」
しびれを切らした三日月が、審神者に尋ねた
それを皮切りに他の男士達も声を上げる。
「静まれ!!」という長谷部の言葉で収まったため、審神者が正直に答え始めた
「そうね。この演練の意図…もうみんな分かってると思うんだけど、この演練にあっちが勝ったら、桜華切冴姫を譲り渡すように…ってさ」
審神者の言葉に、刀剣男子達のいた庭一面に冷たい殺意の様なものが流れた
「なんだそりゃ…」
「ねぇ、演練の相手ってさ、主と同じように刀剣女士の顕現に挑んだ審神者のとこだよね?」
「…そうだよ」
一切納得していない和泉守に代わり、補足をしたのは古株の1人の加州だった。
桜華切冴姫のように、刀剣女士を顕現しようとした審神者はこの本丸の審神者だけではなかった。
政府の新たな試みとして刀剣女士の顕現の話が上がったが、刀剣女士を顕現するためには、その刀や審神者の力量が必要だったのだ。
普通の刀剣男士を顕現するよりも力を使う刀剣女士の顕現には、6人の審神者が名乗りを上げた。
しかし、成功したのはこの本丸の審神者の凛華のみだった
「その審神者も失敗したんじゃな。なのに冴姫を欲しがるなんて何考えちゅーんじゃ」
「…言いたくないんだけど、ここの本丸ブラックなのよ。芸子さんを呼んでは審神者も刀剣達も性の捌け口みたいに扱って、他本丸の女審神者さん達もお金で釣ってそういう事をしているみたいなの。だから、もし冴姫を取られるようなことがあったら…」
分かるよね?あんた達・・・と言わんばかりの顔の審神者に、いつもは明るく楽し気な刀剣男子達は気が引き締まるような気になった