第6章 懐剣の苦難
『やっ!?薬研!?』
「そんなにはっきり言われちゃもうなんも手出しできねえよ。わかったよ、いきなりひでぇ事して悪かったな」
『や…あたしこそ、ごめん…』
「はぁ…。まぁ、姐さんにはもう好きな人がいるだろうからな最初からあきらめてたけどよ」
『はい!?好きな人なんていないよ!!』
あたしに背を向けてそんなことを言うものだから、あたしは彼の肩を掴んで問い詰めた
「えっ…いねえのか?」
『いないよ!!』
「…ぁ、なんだ…。でも何振もの男士がお前を好いているからな。モテる女は大変だな」
彼の何とも言えない妖艶な笑顔にあたしは思わずドキッとしてしまった。
『も…モテないよ!!ただみんな、あたしがあんまりない刀剣女士だからみんなからかって…』
「あぁもう…そういうとこだよな、姐さんの悪いとこ」
『は?』
「…鈍すぎんだよ」
と言いながら、彼はまたあたしに軽いキスをした
ほらな?と笑うと、彼はそのまま廊下を歩いて行ってしまった
鈍い・・・のか?
いやいやいや、あたしは好かれてるんじゃなくてただ女だからからかわれてるだけで・・・
なんて考えているけど、鶴さんや三日月さんのアレを思い出してしまうとどうもからかっているような感じではないと思う
でもないない、あたしなんかに好意持つはずないよ
第一、ここには主ちゃんがいるんだもん。ふつうはそっちを見るはずだもん
・・・でもあの主ちゃんは刀剣男子達を近づけたりするだろうかと、もやもや考えるがあたしにはよく分からなかった
あたしの記憶には確かに江戸から平成まで生きているが、平成の事はいまいち覚えていないから恋愛観とかは皆無だった
・・・あたしは、恋をしているのだろうか