第5章 姫の初夜
『じゃあ、御馳走様でした』
「はい、今からお風呂?」
「あっ!!お風呂ならボクと入ろ!!」
乱ちゃんがそういうものだから、また粟田口の子達が言い争いを始めかけた。
『ごめん、今日は個室風呂にするよ』
「えぇ~、なんで?」
「乱、桜華切殿は今日体調が悪かったんだろ?1人でゆっくり入らせなさい」
と、一期さんが気を使ってくれて乱ちゃんは他の粟田口の子達の元へ戻って行った
あたしは、大浴場の隣にある個室風呂に入った
この個室風呂は鍵付きで、鍵はあたしと主ちゃんしか持っていない、男嫌いの主ちゃんが作ったものだ
・・・いつでも使っていいと言われたから今使う
あたしは、鶴さんがしようとしていたことの意味は分かっている。それが何を意味していてどういうものかってことも
だから、あたしはあの行為が嫌いだった
あたしは、主ちゃんに言った通り最初の主は織田信長様の妹君のお市の方様だ。それからお市様の娘子の茶々様・初様・江様と受け継がれ、江様が徳川家に嫁いでからは、代々将軍の正室の方があたしを持っていた
元の主達が嫌いなわけじゃない
でも、あの行為だけは嫌いだった
主の中には、将軍が無理やり正室に招き入れた者も少なくなかった。主に好いた人がいようが将軍が嫌いだろうが跡目を作るために繰り返される行為、それを求める者もいたけどそれよりあたしは行為の後に涙を流す者の記憶が強く残っている
あの行為に愛なんて存在しない
綺麗だなんだと言ってても、結局は己の欲のためのもの・・・
そんな記憶しかないから、あの行為を受け入れることができないのだ。決して鶴さんが嫌いなわけじゃない
主ちゃんも、誰かとあぁいうことしてるのかな・・・