第5章 姫の初夜
「あっ!!兼さん、冴姫さん。一緒なんて珍しいですね」
兼さんに頭を撫でられていたら、廊下の奥から堀川君が走ってきた。あたしは別にびっくりしなかったけど、兼さんはかなり驚いていた
慌てたようにあたしから離れる兼さんだったが、堀川君はそれには触れなかった
「今日は洋広間で夕餉みたいですよ。」
『あ、そうなんだ。主ちゃん洋食好きだからね~』
「主さん今大詰めですからね、少しでも機嫌直してほしいからって燭台切さんが言ってましたからね」
『そだね~、じゃあみんなで行こっか』
「あ、僕ちょっと兼さんと話があるので先に行っていてください。粟田口の人たちが冴姫さんのこと心配してましたよ?」
『あぁそっか、じゃあ先に行くね』
と、堀川君と兼さんと別れて先に洋広間に向かった
その時兼さんの方を見ると、兼さんはなんだか顔が赤い気がした
***
「ふふふ…」
「なんだよ…」
冴姫が立ち去ってから、俺のそばにいた国広がクスクス笑っていた。その理由はなんとなく分かっていたが・・・
「だって…兼さんも随分積極的になったな~と思って」
「アレは別に違ぇよ!!ただあいつが何か悩んでそうだった…から…」
「それで頭なでなでしてたと?」
「うるせえよ!!」
アハハと笑う国広だったが、急に真面目な顔になって言った
「でも兼さん、好きなら早めに伝えた方がいいですよ?彼女を狙っている人はたくさんいますからね。」
「・・・。」
冴姫が悩んでいる理由もそれか?なんて考えると腹が立った。
俺もあいつが好きで、気になるのも自分でわかっている
初めて会った時からずっときれいだと思っていたし一緒に過ごす中であいつのことをもっと好きになった
でも、きっと他のやつもあいつが好きだろうし・・・
あいつも俺よりも親しい奴がいるだろうから俺はなかなかあいつに積極的になれなかった
でも、他の誰かのせいであいつが悲しんでるのは我慢ならなかった。
・・・今夜、またあいつの部屋に行くか