第5章 姫の初夜
・・・気が付いたら、障子の色が赤く染まっていた
いつの間にか床の上で眠ってしまっていて身体を起こすと、体の節々が痛くなっていた
『…今何時だ?』
部屋から出ようと思い立ち上がろうとするとあたしの肩から何かが落ちた。それは赤いジャージだった。見覚えのあるそのジャージを携え部屋を出た。すると、ちょうどそのジャージの持ち主が現れた
『あっ…』
「お…」
その人はあたしの姿を見るや否や足を止めてあたしの姿を見た。
『これ…兼さんがかけてくれたんですか?』
「あ…まぁな。お前が部屋に入っていくのを見かけたが昼餉に来なかったから気になってな。そしたらお前寝てるものだからよ、起こすのも悪いと思って…それで」
ジャージを貸してくれた人は兼さんだった
「ほら、もう夕餉だ」と言いながら、兼さんはあたしの前を歩きながら食事をする広間に向かった
『あの…兼さん、このジャージ洗ってお返ししますね』
「別にいいって、そのまま返してくれりゃ」
と、あたしの手にしていた彼のジャージを強引に奪い取りそのまま着てしまった。
『あの…あり』
「お前、何かあったのか?」
『へ?』
「目、赤いぞ」
あたしの前を歩いていた兼さんが足を止めてあたしを見た
焦って目元を隠しても兼さんはまだあたしを見ている
『いえ、何でもないですよ』
「…ならいいけどよ」
ため息交じりで納得したようなことを言うが、さらにあたしに近づいてきて兼さんはあたしの頭にポンと手を置いた
「あんま無理すんなよ?なんかあったら相談くらいはのってやるからよ」
『あ…』
頭を撫でられることなんてなかったからすごく驚いたけど、兼さんの手ってすごく大きくて温かかった。
なんだか、触れられているだけなのに・・・