第2章 初内番
「はい桜華切さんどうぞ。」
『ありがとうございます。にっかりさん』
にっかりさんから湯飲みを受け取ってフゥ…っと息を吹きかけてからお茶を口にした
『ほぁ~…、おいしいです!!』
「それはよかった。」
「…華が添えられていると、よりおいしく感じます」
『華?』
周辺を見ても、花らしいものは見当たらなかった
遠くに大きな桜が見えるくらいだった
「ふふふ、貴女のことだと思いますよ」
『はっ?!』
にっかりさんがニコニコしながらそんなことを言うものだからあたしは数珠丸様を見た。目は閉じているがとてもニコニコしている
「貴女は主様が御つくりになられた女子。華と愛でてもよいでしょう、姫」
『いや…あたしは姫なんて呼ばれるほどあたし綺麗でもないですし…』
「いや、桜の花のように美しい。」
「確かに、この本丸に華が添えられてみな喜んでいますからね」
にっかりさんまでもがそんなことを言う
あたしは顔が熱くなるのを感じながらお茶を啜る
それでも、2人の視線が痛かった
『あの…そんなに見ないでください…』
「美しいものを見てはならないという理はないだろう?」
『だから美しくなんて…』
またそんなことを言う数珠丸様に睨みをきかせると、数珠丸様は湯飲みを置いてあたしに近づいてきた
顔がつくギリギリのところで止まった数珠丸様がそっとあたしの顔に触れた
「…本当に美しいですね。」
『やっ…あの、数珠丸様…?』
シャンシャンシャン!!!
突然本丸中に響き渡る鈴の音
『なんですか?この音』
「出陣した部隊が戻ってきたみたいですね。」
『出陣?』
「主の命令で時間遡行軍が現れた時代と場所に行って遡行軍と戦うんです。」
『へぇ~すごい!!』
「すごいといっても、貴女は恐らく出陣はしないと思いますよ?」
『えぇー!?何でですか?』
にっかりさんがそういうから、あたしは数珠丸様から離れてにっかりさんに近づいた
「女の子だからです。」
『むぅ…女の子だからって特別扱いしないでもらいたいです!!』
「おや?どちらへ?」
『ちょっと激励に行ってきます。にっかりさん、ご馳走様でした。』
そう言い残し、あたしは鈴の音の方へ走った