第2章 初内番
「よぉし!!全員いるな!!」
「長谷部殿、まだ乱がいません。今朝早くから姿が見えなくて…」
「おっ?新人もおらんな。まだ寝ちゅーがか?」
「なぁに!?あの小娘!!昨日あれだけ…」
「ごめんなさ~い!!」
『遅れました~!!』
長谷部の雷が落ちそうになった瞬間、2人の声と走る音が聞こえてきた。その場の全員がそちらに注目する
「あっ!!!お前ら、今何時だ…と」
「ごめんなさい、準備に手間取っちゃって…」
『いいんだよ乱ちゃん、女は多少男を待たせるくらいの方が可愛いんだよ』
そう耳打ちするが、周りは一切そんなことを気にしていなかった。
みんな、ぽぉっと2人を見つめていた
「…可愛いネ。」
「うん…、何がって冴姫もだけど、乱もなかなか…」
「弟の…晴れ姿」
「いっ…いち兄、泣いてる?」
大和守がそういうと、隣にいた加州も同意した
乱の兄貴分である一期一振に至っては、愛らしい弟の姿に僅かに涙を流していた
2人の恰好は小花柄の色違いの甚平だが、その作りは昨日の物とは全く異なり、ワンピースのような形をした甚平だった
帯は大きなリボンのようで、さらにお揃いのポニーテールをまとめている髪結い紐もお揃いだった
「ンン゛!!お前ら可愛らしいのは結構だが…、時間に遅れるとはどういうことだ!」
『だから、女の遅刻は許すのが男だよ?気が短いとモテないよ?』
「黙れ!!今後時間通りに来なかったらその愛らしい衣は一切禁ずるからな!!」
『はぁ!?女からオシャレ取り上げるとか何考えてんの?ばっかじゃないの?』
早朝からの長谷部と彼女の喧嘩を見ている周りの者はとても楽しそうだった