第13章 ハグの日 *葉月*
「わぁあ!!なにするっちゃんいきなり!!」
『わっちょ…危ない!!ど、どうしたんですか?』
「徳川家2代目将軍秀忠様の正室、お江様から15代将軍の正室に代々伝わってきたとされる懐剣…徳川家に伝わってきた僕ですらずっと会えなかったが、このようなところで出逢えるなんて…運命だ。あぁ姫…」
しみじみとあたしを抱きしめながら涙ながらに言うものだから、あたしは珍しく動揺のあまり何も言えなくなってしまった
「おい亀甲兄ちゃん!!離れろよ!!俺だってまだサキちゃんに抱き着いてねえのに!」
「なんだい、太鼓鐘。なぜそんなに止めるんだい?」
「今日は、主の命令でサキちゃんに抱き着いてときめかせたら誉をもらえるんだよ。だからみんな…」
「それは…なんというご褒美のような命令なんだ!ご主人様の命で姫を抱き、さらにその成果でご主人様に誉をもらえるなんて…!!」
と、少しだけあたしから離れて高揚しながら天を仰いで喜んでいた。あたしは、そんな亀甲さんを見ながらそっと後ずさりをしながら彼らから離れた。
これは・・・危ない雰囲気しかなかったから
『あ…じゃああたし行きますね!』
「あぁ姫!!どこへ行くんだい!?」
「サキちゃん!俺まだ抱き着いてない!!!」
背中に亀甲さんと貞ちゃんの声を感じながら、あたしは博多君を抱きしめたまま走ってその場から逃げた