第1章 鍛刀完成 *卯月*
「…相分かった。致し方有るまいがそなたのことは冴姫と呼ぶことにしよう」
『…ありがとうございます。えっと…三日月…。やっぱり〈さん付け〉はさせてください!!』
「じじいでよいと申しておるに…。まぁ、三日月さんで手を打とう」
ようやく、三日月さんとあたしは収まるところに収まった
鶴丸と三日月さん、鶯丸様、小狐丸様と呼び方の他に敬語はやめろという話をしていると、今度はまた見知らぬ3人がやってきた
「おぉ!!左文字兄弟が来たか」
「席が空いてなくて。ご一緒しても良いですか?」
3人の中で特に美しい方があたし達を見渡してそう言った
あたしは、3人の中で一番小さい子に目をやった。あたしを警戒しているのか・・・あたしをじっと見ている
「おや、そちらの方は新人ですな?」
小さい子を背に隠している薄桃色のフワフワした髪の方があたしを見つめてそう言った。
『桜華切冴姫です。よろしくです』
「…僕は宗三左文字も言います。この子は弟の小夜左文字。こちらが兄の江雪左文字。」
『よ…よろしくお願いします。』
なんとも重い雰囲気を漂わせた兄弟だったためあたしはどうも萎縮してしまった
結局8人掛けの席が満席になってしまった。
あの小さい子…小夜君があたしの正面だった。
夕餉の最中は、基本はあたしと鶴さんがしゃべりそれに他の太刀の方々が入ってくるようだった。
左文字の兄弟は全然会話には入ってこない
ふと…小夜君が、何かをじっと見ていることに気が付いた
それは、テーブルの中心に置かれたリンゴだった
兄2人は、食べることに集中しているのか何も話さなかった。
果物ナイフと共に置いてあり、ご自由にどうぞ状態だったが小夜君はじっと見つめているだけだった
あたしは置いてあったナイフとリンゴを手にし、シャリシャリとリンゴの皮をむく
「おっ?冴姫、どうした?」
鶴さんが訪ねても無視して、あたしは一心にリンゴの皮をむいていく。
『よし!はい、どうぞ』
切ったリンゴを小夜君に手渡すと、小夜君はちょっと分かりにくいが頬がパッと明るくなり、目が少し開いた