第12章 好意
『えっ…あの、何か?』
「いや、随分と和泉守を意識しているのだなと思ってな」
『はいッ!?』
「おや?違うのか?てっきり和泉守を慕っているのだと思っていたが」
『いや…違うというか…』
顔から火が出ている感じだった
あまりの熱さにそのまま鉄鋼に戻ってしまいそうなくらい
あたしが視線を逸らすと、鶯丸様はまたクスクス笑った
「これ以上聞くのは野暮なようだな。まぁ、頑張るといい」
『いや、頑張るも何も…』
「だが、他の者がどう思うかな」
『はい?』
「いや、こっちの話だ」
と、鶯丸様はフフッと笑ってお茶を啜る
その意味が分からないまま、あたし達は昼餉の時間まで縁側でお茶を飲んでいた
***
「おい和泉!どうしたんちや、そんなに慌てて」
ッあぁぁ!!やべえ・・・
俺、冴姫と間接きすしちまった・・・!!
あの海の事件から、冴姫が俺の事を避けているのは明白だった。俺と一緒にいる国広はそれを楽しそうに見ている
だから、国広に相談してみた
冴姫は俺のこと嫌いになっちまったんじゃないかって・・・
そしたらあいつは
「それはないと思うよ。だから、兼さんはいつも以上に多くスキンシップをとるといいよ」
と言った
だから、主に頼んでスキンシップの仕方の本を借りた
その中に、飲み物の回し飲みがいいと書いてあった。現代では〈間接キス〉っていうらしいが、これは想像以上に恥ずかしい
あれで余計に彼女に嫌われていないかと言う気持ちと、気恥ずかしさがあって俺はさっさと部屋に帰りたかった
後ろにいる陸奥守がどんな表情で俺を見ていたのかも知らずに・・・