第11章 思い人
『おっと、蛍ちゃん小夜ちゃん。足元危ないから気を付けてね』
「うん、じゃあお姉ちゃん手ぇ繋いで?」
「僕も」
と、2人はあたしに手を差し出して、あたしは右手で蛍ちゃんの左手で小夜ちゃんの手を握った。
このプライベートビーチどれだけ広いんだと思ってしまうくらいかなり歩いたり所にところで向こうの方から秋田君が走ってきた
『あれ?秋田君、どうし…』
「お姉さん!!助けてください!!」
走ってきた秋田君は顔をくしゃくしゃにして大泣きしながらあたしに抱き着いた。
「あれ?一緒にいた博多と前田と一緒じゃなかったの?」
「…何か、あった?」
「うぐッ、前田が、前田がぁ!!」
『落ち着いて秋田君、何があったの?』
「うぅ、海で遊んでいたらずっと遠くの方に前田が流されて…でも、助けられなくて…」
『うん、分かった。秋田君とあと小夜ちゃんは皆さんを呼んできて。蛍ちゃんは一緒に行こう』
と、2人と別れて秋田君に教えてもらった場所に走る
その場所は思ったよりも近く、その場所の波打ち際には博多君が泣いていた
『博多君!!』
「うぅ、サキ姉!どうしよう、俺…あぅ、前田が!!」
博多君が泣きながら指さす方には遠い沖にいる前田君だった
遠巻きに見える前田君は、漂流物に捕まってなんとか耐えているようだったが、大きな波が来たら今にも沈んでしまいそうだった
「…お姉ちゃん、ここは俺が…」
と、蛍ちゃんがあたしの前に出るがその小さな体は震えていた。そういえば、主ちゃんから聞いたことがあった。蛍ちゃんは過去に・・・
『蛍ちゃん、博多君。あたしが行くよ、みんなが来るまで待ってて』
「でも、お姉ちゃん…」
『大丈夫、あたしこう見えて泳げるから』
と、あたしは履いていたサンダルを脱いで海に入っていく
強い日の光で最初は温かかった海も深くなるにつれてどんどん冷たくなっている
でも、そんなことは気にせずあたしは前田君に向かっていく