第11章 思い人
『失礼します』
手合わせをする道場に来ると、丁度蜻蛉切さんが木刀の槍を相手と交じ合わせているときだった
『あの、蜻蛉切さん』
「おぉ、桜華切殿。いかが致した?」
『えっと、今顕現した…』
「久しぶりデスね、蜻蛉切」
「おぉ、村正か!ようやく来たか」
huhuhuと笑いながら入ってきた村正さんが蜻蛉切さんに近づくからあたしは少し2人から離れた。そして、道場の壁に寄りかかっていた人の隣に座った
「顕現うまくいったみたいだね」
『はい、もうドキドキでした。髭切様は今日は非番でしたよね?』
「うん、だからこうして弟の…」
「膝丸だ」
「…の手合わせを見ていたんだよ」
と、あたしや髭切様を汗を拭きながら見下ろす膝丸を見ながら話す。でも、今日の膝丸はなんだかバツが悪そうな顔をしていた
『膝丸?どしたの?』
「えっ…いや…」
「ふふ、弟はなにか冴姫に言いたいことがあるみたいだよ」
と、隣でクスクス笑いながら膝丸を見る
「兄者!」と小さく怒る膝丸の顔をじっと見ていると、仕方なさそうにため息をついた
「その…昨夜の、ことなのだが…あの、俺がしたことは忘れてはくれないか?」
『昨日…?何かしたっけ?』
「はぁ!?」
「おや?覚えていないのかい?」
『えっと…膝丸に何かいわれたことは覚えているけど…何したっけ?』
そこまでいうと、髭切様は小さく大爆笑していて膝丸は顔を真っ赤にしている
状況の飲み込めないあたしは、頭上に?マークをつけて2人を見比べる
『えっと…』
「…っはぁ、笑った笑った。」
『何ですか?』
「え?いや、本人に聞いたほうがいいと思うよ」
ついに涙を流し始めた髭切様から膝丸を見るとなぜかこっちを向いてくれなくなった。昨日のあたしはいったい何があったんだ・・・?
「おーい!!みんないるか!!」
と、スパーン!!と道場に入ってきたのは獅子君だった
『獅子君、どしたの?
「みんなで海に行くぞー!!」
と、大きな声でそう言い放った