第10章 初出陣 *文月*
自身を持ったあたしが出陣をする時間移動装置のある中庭に行くとすでに準備を済ませた初期刀の皆さんがいた
「君の戦着は、いつ見ても美しいね」
『あ、ありがとうございます。でも、全然本物じゃないですけどね』
あたしの着ている戦着は見た目こそ婚礼の衣装の白無垢のようだが、長襦袢はミニの着物な上に打掛も真っ白なフード付きケープのすごく軽いもの
その割に皆さんはすごく褒めてくれる
「女の子感が強くて凄く可愛いよね。あとこの簪も」
『あ、これは次郎姉様にいただいたんです』
「桜の簪かい?君に会っていて美しいね」
「まっこと大丈夫か?何かあったらわしが守ってやるぜよ?」
加州君もあたしの元に来てそんな話をしてくれる
山姥切さん以外の4振りに囲まれたあたしは、それで少しだけ安心できた
主が来ると、あたしの周りにいた皆さんもしっかりと横一列に並んだ
「それじゃあんた達、冴姫のこと頼んだよ」
主の言葉に重くうなずく皆さんを横目で見るとなんと頼もしい事か
そこであたしは、ようやく皆さんの足を引っ張ってしまうのではないかと言う不安に駆られた
すると、その不安を察したのか隣にいた陸奥があたしの手を握った。陸奥を見るといつもの笑顔であたしを見ていたからあたしもそれを見てニコッと笑う
「それじゃ、みんな気を付けて行ってきてね」
と、主は時間移動装置を起動させた
遠征で使ったことはあるけど、なんだかすごく緊張した
装置が作動すると強い光に包まれた
その瞬間ぶわっと強い風に襲われて、あたしはつい目を閉じてしまった