第10章 初出陣 *文月*
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「失礼するよ主、今蒸し饅頭が上がったところだから差し入れに持ってきたよ」
「んぁ~…甘いものぉ~…」
蜂須賀と歌仙が審神者部屋の障子を開けると、中ではメガネを描けて白紙の紙とにらめっこをしている凛華の姿
その片割れには加州と山姥切、部屋の奥では陸奥守が散らかった紙を片していた
「おや、いい時に来たね」
「ん?」
「主、少し話を聞いてくれないかい?」
歌仙は改まって凛華の正面に座った
ここに集まっているメンバー・・・いわゆる初期刀の面子は、そんな歌仙をじっと見る
「主、そろそろ冴姫さんにも出陣の命を出してもいいのではないか?」
「…歌仙、その話はしないでって…」
「今日の手合わせを見た。極みのお小夜をも圧倒し互角に渡り合っていたんだよ。彼女が心配なのは僕たちも同じだ。でも人である前に僕たちは刀だ、もちろん彼女も。このまま抱えておくのは刀の彼女にとってはとても苦痛になっているのではないのかい?」
歌仙の言葉に凛華は素直にうんとは言わなかった
でも、初期刀の面子は比較的歌仙に合意的だった
「俺も、今の冴姫なら出ていいと思うな。」
「俺もそう思うよ。先日贋作と手合わせしているのを見たが、あれとも中々に渡り合えていたよ」
「主、心配せいでも大丈夫ちや。もうあの時のみたいな・・・」
「陸奥守…」
加州と蜂須賀が賛成し、陸奥守も何かを言おうとしたがそれを山姥切が止めた
ハッとした陸奥守は周りを見ると、4振りは少し厳しい顔をしていた。凛華に至っては額をテーブルに当てて伏せってしまっていた