第10章 初出陣 *文月*
『んふ~♡おいひぃ~♡』
「ふふ、喜んでくれてうれしいよ」
「後で浦島にも持っていこう」
台所に来ると、部屋中に広がる甘い香りに包まれた
歌仙さんと一緒に炊事当番の蜂須賀さんが意気揚々と蒸し器の蓋を開けている
小夜ちゃんと並んで蒸し饅頭・・・いわゆるあんまんを食べているとそんな様子を見ていた歌仙さんがニコニコと笑っていた
『…どうしました?』
「いや、君は本当に愛らしいなと思ってね。お小夜と並んでいると余計にね」
『またそんなこと言って…』
「でも、姉様すごく強くなってる」
「それは僕もさっき少しだけ2人の手合わせを見せてもらって思ったよ」
あたしが3つ目のあんまんに手を伸ばしていると、小夜ちゃんと歌仙さんがあたしを見ながらそんなことを言う
『そうは言っても出陣できないわけですし~。強くなったってねぇ~…』
と、あんまんに齧り付くと歌仙さんはうーん・・・と顎を抑えて何かを考え始めた
すると、歌仙さんは蜂須賀さんに耳打ちをした
蜂須賀さんは何か理解したようにうなずき2人は急に台所を出て行こうとした
『あれ?お二人ともどちらへ?』
「ちょっと主の所へ。蒸し饅頭の差し入れに」
「2人はゆっくり食べていていいよ」
そう言い残して2人は出て行ってしまった
あたしと小夜ちゃんは、仕方ないからまたゆっくりとあんまんを食べ始めた