第9章 初遠征
「小狐丸さま、どーしたんですか?そのほっぺ」
「まぁ…朝からじゃじゃ馬に一蹴り食らってしまってな…」
朝餉のために和広間に向っているとき、小狐丸様と今剣ちゃんがそんな話をしている声が聞こえた。でもあたしは聞こえないふりをして、朝ご飯を食べる
「お姉ちゃん、今日は大丈夫そう?」
『うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがと』
「…うん、今日はホントの笑顔だね」
今日の朝餉は来派の人達と一緒だった
・・・と言っても明石さんはまだ寝てるみたいで、愛染君と蛍ちゃんと一緒だった
「サキ姉!今日内番なかったら一緒遊ばねえか?粟田口の連中とも約束してんだ!!」
『あー、いいね。ちょうどこの前の埋め合わせもしたかったから』
「あ、なら俺も遊ぶ」
すっかりご飯を食べ終わってあたしと蛍ちゃんを見ていた愛染君がそんなことを言いだし、隣の蛍ちゃんもあたしと遊べるとなってとても喜んでいた
すると・・・
「おぉっす、ちょっくら邪魔するぜ」
『あ…』
8人掛けの座敷にあたしと蛍ちゃんと愛染君の3人で座っていたら、ちょうどあたしの斜め前に日本号さんが座ったその隣に御手杵さん、蛍ちゃんと反対隣に蜻蛉切さんが座った
「おぉ!三名槍が朝からお揃いか。日本号は昨日もずっと飲んでなかったか?」
「あぁ、次郎太刀と飲み比べしてたとこまでは覚えてんだが、それ以降の記憶が全くねえんだよな…。」
「俺なんてそれすら覚えてねえのによ…」
頭を抱えながらそんな話をしている日本号さんと御手杵さんだったが、あたしだけはなんだか居心地が悪かった
だって、昨日の今日だから・・・
「冴姫殿…」
『はッ…はい?』
蜻蛉切さんに呼ばれ返事の声が少し裏返ってしまった
蜻蛉切さんはあたしの方に手を伸ばしてくる
『・・・ッ!?』
あたしには、それが昨日の敵本丸の蜻蛉切と重なって見えてしまいギュッと目を閉じた