第8章 愛情と劣情
「じゃあお姉さん、おやすみなさい」
かなり時間が経ってからあたし達はようやく浴場から出た
一頻り泣いて落ち着いた頃には数人の短刀達はすっかり逆上せてしまっていた
今は丁度夕餉の時間のようでみんなは宴会場に向かったが、あたしは自室に戻ることにした。
誰もいない廊下を歩いているが、不思議と落ち着いていた
泣いて落ち着いたからか、さっきの蛍ちゃんの言葉のおかげなのか不思議な安心感があった
「冴姫さん」
『…ッ!?あぁ…小狐丸様…』
誰もいないと思っていたところに小狐丸様が現れるものだからあたしは無意識にびっくりしてしまった
それと同時に、さっきの本丸の小狐丸を思い出してしまう
「具合はいかがですか?」
『あ、大丈夫です。でもちょっと疲れちゃったので今日は休ませてもらいます…。すみません』
「そうですか、なら…ッ!?」
小狐丸様の横を通り自室に向かおうとした瞬間、小狐丸様があたしの手を掴み廊下の壁に押し当てた
『痛ッ…こ、小狐丸さ…』
「これは…誰につけられたのです?」
『えっ…?』
すごく怖い顔をしている小狐丸様は、あたしの首元にそっと触れた。触れた場所はさっきの小狐丸があたしの首に何かしたところだった
『いや…これは』
「まさか、先ほど匂ったどこぞの狐ですか?」
『えっ…いやぁ…』
ごまかそうにも言葉が出ない
あまりにも小狐丸様が恐ろしくて・・・
「…やはり、先に手に入れてしまえばよかった」
小さくそう言った瞬間、小狐丸様はあたしの顎を掴み自身の方に引き寄せた。そのままあたしを抱き寄せ強引にキスをした