第8章 愛情と劣情
「冴姫!!」
障子を蹴破って入ってきたのは行光だった
息を切らして入って来た行光はあたしの姿を見つけた瞬間一瞬安堵したがすぐに怖い顔になった
「テメエら…冴姫に何しやがった!!」
三名槍に向かって切りかかっていく行光を、兼さんがそっと止めた。でも、彼が纏っているオーラに落ち着きも何もなかった
「うちの懐剣がお世話になったなあ。さぁ、その姿のままでいたいならさっさとそいつから離れな」
刀を三名槍に・・・いや、その先にいる小狐丸に向けていた
それでも、あたしのそばにいる小狐丸様はニコニコと笑っていた
「おやおや、そちらの部隊長殿はずいぶんと気性の荒いお方のようで」
「誰のせいで荒くなってんだろうな。いいからさっさと…ッ!!」
「下がりなさい、和泉守」
行光と同様に今にも相手を切りかかろうとした瞬間今度は彼の後ろから女性の声が聞こえた。凛華だった
「やっぱりね、こんなことだろうと思った。全くどこの男審神者もバカばっかり!」
怒りのままに部屋に乱入して来た凛華に、日本号が近づいていく。
「おいおい女審神者様、こんな男所帯に上がり込んでくるってことは、あんたも相当な…」
「触るな」
と、凛華はお守りとして持っている数珠を日本号に向けた。するとそれを見た日本号も他の刀達もそれ以上彼女には近づかなかった
「和泉守、冴姫を連れてきなさい。帰るわよ」
「おぅ…」
兼さんは、そう言われて刀をしまいあたしのそばに来た
着ていた新撰組の羽織をあたしにかけそのままお姫様抱っこで部屋の外に出された
「お待ちください!!」
凛華が部屋から出たとき、この本丸の男審神者が息を切らして向かって来た
兼さん以外の4振りはその審神者に向かって刀を身構えた