第8章 愛情と劣情
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「嫌です。だって、貴方達だけズルいですもん」
ここの前田がそんなことを言った
五虎退も、そう言われて少し気が引けているような様子を見せた
「で…でも、お姉さんは僕達の…」
「お前らだってどうせあの女とやってんだろ?」
「なっ…////」
「わぁ!真っ赤になってます!」
薬研と前田に茶化されるが、五虎退は尚も刀を向けた
早く冴姫のもとに行かなければと、その思いだけだった
「退いてください!!」
「退かねえよ、お前はここで止めてねえとな。あとは、三名槍の旦那方に任せているからな」
「なっ!?」
「まぁ、三名槍の旦那達なら…ッ!!」
五虎退の前にいた厚が一歩前に出ようとした瞬間、彼の目の前に鋭く光るものが現れた
「へぇ、うちの姫はそちらの三名槍がかわいがってくれてんのか…」
「そうか、ならこっちもきっちりお礼せないといけんな」
五虎退の後ろから、和泉守と陸奥守が般若のごとく顔で短刀達を睨みつけていた
「てめえら…俺の冴姫に何を…!!」
「鯰尾、きっちりそいつ抑えとけよ。こいつらは、俺たちが片付ける」
今にも彼らを折ってしまいそうな面持ちの不動を鯰尾が窘めるがそれでも不動は止まりそうになかった
「不動行光…わしらに任せて少し抑えろ」
それは陸奥守も同じだった
今にも短刀の1つや2つ折ってしまいそうな面持ちで、短刀達を見ていた
「それで?その三名槍様は…どこにいる?」