第7章 初演練 *水無月*
『な…なにそれ…』
「我が主の命だ、お前が欲しいとな。主ももう遊女と遊ぶのに飽きたようで自分に従順な女が欲しいと言われたのだ。主はそのために刀女を顕現しようとしたがあいにく力が及ばずその願いは叶わなかった」
「だから、唯一顕現に成功したあんたの本丸から奪おうってなったんだ。そっちの方が手っ取り早いからな」
最低だ・・・
まずそんな考えに及んだ審神者が信じられないし、それを良しとしている刀剣達も最低だと思った
『あたし、貴方達の本丸になんて行きたくない!!』
「そうか、ならば来たくなるようにしてやろう」
今度は、本気であたしに顔を近づけてくる三日月宗近
背中には鶴丸国永、横には江雪左文字と逃げ場がどんどんなくなっていく
『いや…やっ』
逃げられない恐怖と、目の前にいる知っているようで全く知らない男への恐怖で不意に涙が溢れてきた
「ハハ、愛らしいな。もっと泣き顔を見せておくれ」
そう言って笑う三日月宗近の顔が、かつて自分の主を泣かせた将軍達と重なってしまった
『やっ…やだ、やだぁあ!!!』
「そうだ、もっと泣くがよい。俺は泣く女を抱くのが特に好きなのだ」
「うちの懐剣を泣かせんじゃねええええ!!!」
三日月宗近があたしの顔に迫ってきていると、三日月宗近のさらに後ろから声がした。それは聞きなれた響きの声だった
「なっ…!?」
「これは…」
鶴丸国永と江雪左文字が状況が見えないらしく声を上げた
声の主は凛華の本丸の隊長、和泉守だった