第4章 【菅原】失敗した日
そうやって二人して笑い合う。昔はそんな事を言ったら冷たいだの、優しくないだのと言ってきたのに少し余裕が出てきたのは社会に出て揉まれたせいなのかなとも思えるし、
(俺もきつい事をサラっと言うようになったなぁ)
と、昔ならあんな事を言ったら名は気にして傷ついて、まいって、1人沈んでしまうので言わなかった。だが昔、言わなさすぎて溜め込み過ぎて今度はこちらがまいってしまったのだ。
(あれからだよなー)
お互い気をつかうタイプでお互いに言えないタイプだったのが少しずつきつく聞こえるかもしれないが、はっきり言うようになってきた。
「また仕事かー?今度は何したんだよ」
「送るデータミスった。」
「ヤバいじゃん!印刷されちゃうじゃん!!」
「それは間に合ったの!直してデータ送ったら、その後にもう一ヶ所間違い見つけてっていうのを三回やった····」
「は?!三回???!!」
「うん·····」
うちの名さんは言わばおっちょこちょいと言うやつで、やったはずがこうしたはずがと言うのが抜けてしまうケアレスミスが多い子だ。
「けど、残りの2つは上にも確認取ったやつなの!!」
「あ、なんだ。じゃぁ上の責任じゃん!」
「それが嫌なの!私がやって、私が自分でちゃんとしてなかったのが悪いのに上のせいになるのが!」
「じゃぁ名が頑張るしかないじゃん。てかなんでミスっちゃったの??そこからじゃない?」
「上にも確認取るし、早く上げたかったから···」
としどろもどろになる
「またかーい!そういう初歩的ミスは見せる前のミス!でもって他人任せすぎ!!!」
「えぇ。ごもっともです」
「で、いつも言うけど名は結局上が見てくれるって思ってるからだって」
いつもならそんな事思ってない!と言い返すのが今回は違い
「そうって事なんだよね。きっと。」
と机に頭をつけてそっぽを向いてしまう。珍しい反応に
(よっぽど堪えたんだなぁ)
と思う。
「まぁ、ちゃんと謝って、また頑張れよ。」
「うーん」
「何かする時は」
「三回見直し。」
「二度目はー」
「間違えてると思いなさい」
「よくできました」
そうして菅原は席を立ち、冷蔵庫を開けてビールとグラスを2つ持ち出す。
「次から頑張れー!!!」
と勝手に名に半分つぎ、勝手に乾杯する。
「ひゃーい」