第3章 【澤村】話は半分
カランカラン
どんどん増えていく空き缶。
それから卒業し、共に暮らし始め
(帰ってきたら殺させる······)
怒られるだろうけど、
(くそーーーーーー!なんで出来ないんだろう)
仕事がしたい。出来るようになりたい。
(今回は何が原因かは分かってるから良いんだけど)
分かってるだけまだ良いとは思う。
(思うけど)
また同じ事をしたら?また同じ事を言われたら?今度は自分で分からない事だったら?不安で不安でつぶれてしまいそうになる。と思っている時点でダメなのだ。失敗を怖がるよりは、失敗して何かを得られる様に考えるのが良い。頭で分かっていると思うのは既に頭でっかちになっているせいか。
そうしてる内にうとうとして
「名ー。名ー。」
と呼ばれて目が覚める。机に突っ伏し、その横には空き缶の数々。そして
「昨日も呑んでたよな?」
「お、お帰りなさい····」
鬼のような顔の大地が立っていた。
「ご、ごめんなさい····」
謝る名にため息をついて、頭をぐしゃぐしゃーっとされる。
「全く。名はプライドが高すぎんだよ。あと打たれ弱い!!」
俺着替えて来るからとネクタイを緩めながら寝室に向かう澤村を見送りながら
(夕飯····)
とよたよたしながら台所に立つ。
「お腹すいてるのか?」
着替えた大地にそう訊かれ、首をふるとだよなと笑われた。
「あんだけ飲めばお腹もいっぱいだ。けど、俺も明日休みだし一杯したいから」
付き合ってと言われて頷けば、じゃぁ座ってていいよと言われ、席に戻ってきた大地の手にはおつまみと缶ビール。
「帰りに買ってきた」
ビール高いよなと笑いながら私にも手渡され、二人で蓋をあけて
「「今週もお疲れ様」」
と乾杯をする。
「昨日言った事、嘘ではないから謝んないけどもっと別の言い方があったなと思ってる」
一言めがそれだった。
「全くこんなに呑んでー」
何でそんなになってんだよと笑う澤村に、酔った勢いで全部話すと所々不服そうな顔をしつつもまぁまぁとなだめてくれてその内
「私の話半分でしか聞いてないでしょ!」
と怒れば笑われてしまった。
「そんだけお酒が入ってるやつの言う事はそんなもんだろ」
「ひどいっ」
けれども、こちらだって気づいたらもう何を言ってるか分かってない。だからそうかそうかと聞いてくれている澤村が有り難かった。