第9章 【澤村】ただいまばかり
しかしこちらは腹ペコだ。
(がっつりメニュー、、、、いや、けど最近食欲ないって言ってたしな)
と電話越しに名が疲れて食べる気が起きないと言っていた事を思い出す。
(俺も満たされ、名さんも満たされ)
そして
(俺が作れそうなやつ)
と、いくら凝ったメニューにしても最後のところでどうしようもないのである。
(献立考えるのって一苦労だな)
『男の子ならお肉でしょ?!』
そう言って、一緒に食べる時は肉料理が多い名
(だからって肉なら何でも良いって訳ではないんだけど)
と思いだし笑いをしてしまう。
(うーんどうすっか)
そうして悩んだ挙げ句に決まったメニュー。
合鍵で中に入り、来た事を連絡する。
『忙しくなるとすぐ部屋がぐちゃぐちゃなんだよねー』
と言ってた割にはキレイで既読がつかない画面を見ているとまぁ、まだまだかかりそうである。
しかし、こちらとて、これからかかるので、
(丁度良いな)
とご飯を炊き、まな板と包丁で野菜を切っていく。
[今日そっちに行くよ]
との連絡に気付いたのは受信時間から三時間経ってたから。
いつもは来るのを知っているから掃除が行き届いた状態なのに、こんな、部屋が汚い時に来て欲しくなかった。
(大地はご飯どうしたんだろう?)
もうこちらは疲れて今からなんて作れない。ならばお惣菜とも思うがいっそ外食してしまいたい。
あぁ、けれども帰ったら愛しい彼氏が居ると思うと少し浮き足出つ気がするのは愛のパワーか。
(とりあえずスーパーも近いし帰ってから考えるかぁ)
一緒に買い物にでも外食にでも行けば良い。
そう思う名は着く時間だけを伝えて直帰した。
既読がつき、
[気をつけてくださいね]
とていねい語が抜けないとこに愛しさを感じつつ、家に近づくとカーテンの合間から光が漏れていることに新鮮さを覚える。
玄関近くまでくるとなにやら台所側の電気がついていて人の気を感じる。
空腹過ぎてカップ麺でも食べてるのだろうか?それは申し訳ないなぁとぼんやり思いながら鍵をあけドアを開くと目の前にある台所に澤村が立って
「お帰り」
と出迎えてくれた。
しかもその目の前にはグツグツと煮立つ鍋。
「た・・だ・い、ま」
驚いていると、
「あー・・・いつも俺が作ってもらってるしさ」
と澤村が先に話し出す。