第9章 【澤村】ただいまばかり
「最近忙しいって言ってたし、俺に出来る事ないかなーって思ってさ」
すると丁度炊飯器が鳴り、炊けた合図がする。
「料理つっても大したものも作れない訳で、結果鍋って言う切っておしまいなやつなんだけど」
と鍋の蓋を開けて具合を見る。その間、名は玄関に立ったままで
「後片付けもちゃんとやるし、さぁさぁ着替えて着替えて」
と澤村に促され自室に連れて行かれ
「飯の支度してるよ」
とドアを閉められた途端
(きゃぁぁぁぁぁぁぁ!)
と名が内心で叫ぶ。
驚いた。大地が居るのは知ってたけど、まさかご飯を作ってくれてたなんて!しかも心なしか部屋片付いてたし、家着いたら大地が居るとか!しかも大地からお帰りとか言われたら!!
と興奮状態。いそいそと着替えを済ませ居間に行くと鍋式の上におかれたお鍋と箸に器にと食卓がセッティングされ
「お米いる?」
とキッチンの方では澤村がしゃもじ片手にきいてくる。それに少しと返せばご飯を盛る澤村。
(うわぁ、うわぁ、大地のお手製ご飯!)
少しと言ったのに並盛のとそれより多めに盛られた茶碗を持って澤村が名の目の前に座る。
(量感覚の違い)
内心笑いながら今日はせっかくだから黙っておこう。と思う名。そして、
「「いただきます!」」
色々考えた結果。煮込んだ野菜は柔らかくなり消化に良い、物足りない分は肉で嵩ましすればお互いの良いとこ取りだ。その上鍋のもとを買ってしまえば作業も切るだけで問題ないと思い鍋になった。
「美味しいぃぃ。美味しいよ大地ー」
「鍋のもとだから味はね、大丈夫なはずだから」
と笑う澤村に、嬉しそうにする名。こんなにも嬉しそうにされると作ったかいがあり、美味しいと言われると作った側もこんなに嬉しくなるもんかとしみじみする澤村。
「明日もまた頑張って」
そう言って名に自分のコップを向けると嬉々として缶ビールの蓋が開く。
「名さん明日も仕事でしょ?」
と笑えば
「大丈夫よぉ」
と名。そして、満足気に
「ご飯作ってくれてありがとう」
と澤村に缶を向け二人で乾杯しあう。
「お疲れ様でした」
その後は仲良く二人で片付けをして、結局澤村は名の家に泊まって行ったのでした。