第8章 【菅原】待った者同士
「名最後にどさくさで大地に抱きついたろ」
「うん」
「道宮が心配するじゃん」
「うん」
「全く、大地はもう人のもんになるんだから!」
「分かってるよ!」
と繋いでいた手を離そうとする名に対応する気なんてさらさらない。
「やっぱり好きなんじゃん」
そう言えばいつものお決まりの台詞が返ってくるはずが
「うん・・・」
とテンションの低い返事。見れば涙する名にため息がでる。
「お前なぁ。今日こそはいつものだろー」
「分かってるー。けど結ちゃんも好きなのー」
そうぐずつく名の手を
「はぁ」
とまた引けは、ぐずつきながらもついてきて、あの時の大地が、この時の大地がかっこよかったと話し出して時たま道宮とのことを思い出すとまたぐずつくのエンドレスループ。
一方、飲み会後ふらつく名と菅原を見送る清水と東峰。影が小さくなっていくと澤村が出てきて
「俺よりスガの方が合ってると思うんだよなー」
と二人を見てそう言った。
「そんな事思ってたの?」
「名が聞いたら泣くぞ」
そう言う二人だが
「・・・・まぁ、菅原は嬉しいかもね」
と清水。
男バレが知るもう1つの恋愛事情。
菅原の名への恋心。
頑なな名とは反対に、菅原は彼女を作ったりもしたが
「名も諦めりゃ良いのに・・・」
と、よく名を送った後、清水と東峰と合流してはそうこぼしていた。
それが今澤村が結婚する事で2人のひっかかりがなくなり
「うまく行くといいけどなぁ」
「なぁ」
と笑いあうメンズに
「名の気持ち知っててよく言う」
と呆れる清水。
場面変わり、ギュッ、ギュッと雪の踏む二つの音。
「全く大地もなー」
「大地の事、悪く、ふぇ、言わないでよー」
「あーはいはい」
ギュッ、ギュッ
「全く名もなー」
「・・・うるさいよ」
毎年、毎年、会っては恋心を復活させて、
「はぁー、俺もなぁー」
ギュッ、ギュッ
「スガは、関係、ない、じゃん」
「はは、言えてねーから」
復活させてはまた蓋をして、別の恋をして、復活してまた蓋をしての繰り返し。
「・・・大地なんて忘れちまえよ」
「しばらく無理」
そうだよなぁ。そうくると思ったよ。俺も俺で酔いに任せて何を口走ってるのか。