第2章 【東峰】やっと着いた先に
(はぁぁ、結構飲んだな)
24歳の冬。新年会だと県は同じくとも都心の方に越した友人達との飲み会の帰り。偶然座れて、今日を思い返すと始終楽しんでいたなと思う。そして先程まで酔いなんてふっとぶ寒さだったのが足元から温かくなっていき、酔いも入って身体も気分もほかほかしてくる。
(大地達とも会いてぇなぁ)
進学して越してしまったメンバーにはこの歳になって更に会えなくなってきた。
(元気にしてっといいな)
マフラーに顔を埋めればさらに温かくなり、
(あの頃も楽しかった)
と昔を思い出す。負けも挫折も苦労も勝利もとたくさんの感情を抱き、苦しんだり楽しんだり、泣いて笑ってと
(目まぐるしいな)
と笑えてしまうほどに充実していた。
(すげぇよなぁ。本当に)
そう思い返しつつ、暖まってきた身体が気持ちよくなってきて
カクッ
と居眠りをしてしまった。降りる駅はまだ先。終電にはまだ間に合うものの、この寒空の中反対の電車待ちはしたくない。
(あー、飲みすぎた。)
名に怒られるなと嬉しい訳ではないのに笑みがこぼれる。高校を卒業しお互い就職組みで仕事を始めてから付き合うようになって1年目で
『東京で勉強してくる!!!』
と急遽上京。まぁその間相談もされていて、背中を押した自分も居たが寂しくて複雑だ。
だが
『あーさひっ』
と、毎日の電話や自分を慕ってくれていることに心が離れていない様に思えて安心して未だに続いている。
「お、俺が相手じゃダメか?!」
そう言った高校生の頃の自分。被服専攻の名は高校最後の文化祭でファッションショーに出て、それのエスコート役をやった旭。
(今思い出しても綺麗すぎだ)
かーっと熱くなる頬、身体の暖かさはMAXになり、高校生時代の名との事や部活の事を思い出している内にうとうととし始めて
プシュー
「はっ!」
戸が閉まった音で起きた時にはすっかり寝過ごしてしまったようで今がどの辺りなのかもよく分からず、とにかく次の駅がどこのなのかのアナウンスを待つ。