第1章 【菅原】甘えてくるところ
俺の彼女は呑兵衛である。
『こーしーー!今から帰りまーす♪』
今日の名は大事な友人と久々に呑むそうで
「ハイハイ。てか帰ってこれんの!?」
電話越しにへべれけな愛しいはずの彼女とは大学で知り合い、知り合った時からお酒が好きで、なのにすぐ酔ってしまって、つぶれて酷いところも見てるけど、それでも愛せてしまう不思議な彼女。
『へへー。楽しかったのー!大丈夫れす!!』
いやいや、その口調は大丈夫そうではないけれど、酔いつぶれてないところをみるとまぁ、酔ってはいるけど大丈夫そうだ。
付き合って4年、今ではお互い社会人になり、同棲を始めている。
酔いつぶれて泣き上戸になったり、仕事の愚直で飲み明かしたり、
『今度こそ当たりだと思ったのにーー』
と泣きながら自分の追い求める会社を転々としている名。
好きな仕事を好きな会社でできるとは限らない。けれども名は自分のスキルも高められて、ずっと働いて動き、その働きはお金の入る好きなことであってほしいと転々としている。確かに前の会社は社長の愛人役でしかないようなところだったので俺としては万々歳だったのだけど
『電車まであと5分よー』
と酔っている雰囲気が漂う会話。
「はぁ。今日は何飲んだの」
そう訊けば、あれとーこれとーと続く銘柄
「名!!お酒は程々にって言ったでしょ!!」
『今日はこれでも少ないよー。』
あー楽しかった。と続く言葉に少しほっとする自分もいた。お互い社会人になり、俺の方が帰ってくるのが遅くて家のことは名に任せっぱなし。名の方は会社で呑むこともあまりなく、愚直を聞けるのも俺位。我が家と言う鳥籠に閉じ込めている気もしてならないが、当の本人は自分で働いてる事もあり常に外へ外へと目線を向けて、鳥籠の鍵なんてちょちょいと抜けてしまう。
「はぁ、ちゃんと帰って来るんだよー」
『はーい。あ、電車きたー!』
「はいはい。じゃぁね。」
『はーい』
あのテンションは帰って来てからも飲みそうだ。
バタン
冷蔵庫からつまみとお酒を出して
「はぁ、名はちゃんと帰って来れるかなぁ」
そうして夜がふける。