第6章 【東峰】良かったね
お祝いにはお酒だよーとルンルン気分の名は冷蔵庫を開け、プルタブを開けようとするのと同時に
「あ」
と東峰が声をあげると缶を開けるのを止める。
「なになに?」
と驚く名に近づき、缶を取り上げると
「え?なに?なんで??」
と残念そうにする名。何もそこまで残念がらなくともと笑えてしまうが
「今日は呑みに行こうか?」
初めて商品が売れたのだ、お客の反応はまだ分からないがきっと良いものだと思う。お祝いだと言うのならちょっとしたお祝いをしに行こう。
「本当っ?!」
「うん。それに、夕飯これから作るんだろ?」
それを言うと名ははっとした顔をして謝りだしたが、お互い仕事があるのだし仕方ないだろう。それに
「今日は良いでしょ」
と名の頭を撫でれば途端、携帯を出して東峰のリクエストもきかずに
「あ、もしもし、マスター?これから行きます!!」
と呑兵衛な名の行き付けのお店に電話していた。
「もしかしなくとも」
「・・・・たまに一人で行きます・・・。」
目をそらす名
「全くなぁ」
「・・・・・すみません」
「ま、行こうか」
と言えば嬉しそうにする名にさらにしょうがないなぁと思いながら行き付けのお店の扉を開き
「今日は良いことあったんだよー」
と嬉しそうにマスターに話す名に俺にもそうやって話してくれればいいのにと思いつつ
「どーせ皆に話した後なんだろ」
と笑うマスターに敵わないなぁと思いながら、隣で嬉々と話す名を見て
(ま、名が楽しそうならいっか)
と
カラン
とグラスを回しながらマスターと
(名ちゃん嬉しそうで良いねぇ)
(えぇ、本当に)
と目線だけの会話をしながら名の話を聞くのだった。
(良かったなぁ名)
信じてくれる人と気に入ってくれる人、どちらも居るのは有り難いことです。