第6章 【東峰】良かったね
帰り道から見える暗いままの我が家がある位置。いつもなら名の方が帰宅が早く、先に帰って来るはずなのに今日は珍しく東峰よりも遅いことを不思議に思う。確かに帰宅するとの連絡もなかったし、こちらもいつも通りと思っていれなかった。家につき、夕飯はどうするかの連絡をしても既読はつかず、それから少し経つと明るい声でただいまよりも先に
「旭!」
と東峰の名前を呼びながら名が合鍵で入ってくる。
「お帰りー。連絡ないから心配」
「売れた!」
「え?」
「売れたの!私が作った服が売れたの!」
服飾を学びに上京し、あちらで就職したものの、実家の縫製工場を手伝うためにこちらに帰った来た。名は縫製工場で働きつつ、最近、ネット上で手作り品を売るアプリで出店する側に登録してここのところ休日は部屋でミシンをふむ事が多かったのはそのせいで、この前は作品の写真を撮っていたのを思い出す。けれども出品してから少し経っても作品は売れず近頃はその話すら話題に出なかったと言うのに
「売れたってあのワンピース?!」
「そう!一点だけど!売れたの!」
あちらでの仕事の方がやりたい事だっただろうに仕方なくこちらに戻り、それを機に一緒に住むことにした。一緒に住んで思うのは、高校の時から服飾好きだったのは家でも同じで帰ってくれば何から物を作っている。おはようが行ってらっしゃいに変わった生活はお互い幸せに思う。
「で、今商品送りに行ってきた!」
興奮しながら話す名はとても嬉しそうで
「嬉しすぎる!自分のを買ってくれた事がこんな直接分かるのって嬉しすぎる!」
と頬を染めていた。
「おめでとう」
と伝えるとありがとうと返ってきて、返ってきたかと思うと
「実物みて気に入ってもらえなかったらどうしよう」
あれをもっとこうしたら良かった。あぁしたら良かったと慌てだす名。
「大丈夫だって、良かったと思うし」
と名の頭を撫でて落ち着かせる。
「本当に良かったな」
と改めて言うと本当に嬉しそうにする名と
ぐぅぅぅ
と言う腹の虫。
「きょ、今日は飲むしかない!」
と意気込む名に
「昨日は今週ラストだからって飲んでたじゃん」
「きょ、今日はお祝いだから!」