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君と並んで歩く未来

第6章 無法地帯


その瞳には既に光などなかった。彼女は片時も放さなかった銀色のロケットペンダントをついに手のひらから放した。今までは胸元につけていたそれは、つい最近逃げているときにチェーンが切れてしまい、手に握りしめながら持っていたのだ。放されたソレは重力に従い地面に落ちる。同じように座り込んでいた彼女の上半身が横に倒れる。座っているのもつらくなっていた。光を失ったその暗い瞳を閉じようとした。彼女はこの時恐怖していたのだろうか。今目を閉じたら恐らくもう二度と開くことはないだろう。いや恐怖などしていなかった。むしろ安堵していた。やっと、やっと、この地獄から解放されることを。完全に瞼が閉じられるというとき、彼女の耳に男の声が聞こえた
「お前が瀬凪か?」
この声が彼女を救った。この人物が彼女に光を与えた。この人物の倅が彼女にぬくもりを与えた



瀬凪は懐かしくて大切な思い出に思いを馳せていたが、ふと現実に戻った。そして目を細めた。まだまだ寒いこの時期。夜の冷え込みは尋常ではない。夜風は彼女の体温を彼女が思っていたよりも奪っていたようで瀬凪は腕をこすると踵を返し室内へと戻っていった。そんな彼女の胸元にはあの銀色のロケットペンダントが月の光を受けて煌めいていた___


瀬凪が丸井の部屋に戻ると彼女が部屋を出るときには寝ていたはずの伊武崎、吉野、榊が起きていた
「あ、起きていたのですね」
「あっ!瀬凪ったらどこ行ってたのよー!起きたらいなかったから心配してたのよー!」
瀬凪に飛びつく吉野。それを難なく受け止めながら首をかしげる
「すみません。あの創馬は何を…?」
彼女は料理をする創馬に目を向け言う。それに周りには見えない目を細めて伊武崎が言う
「一色先輩と料理対決だって」
その言葉に彼女は目を見開いて読めない笑みを浮かべている一色に視線をよこす。それに気づいた彼はしっかりと瀬凪に目線を合わせてほほ笑みかける
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