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君と並んで歩く未来

第6章 無法地帯


瀬凪は今自分の部屋にいた。部屋といっても窓の外の広いバルコニーのような場所だ。そこはあまり手入れがされていないのかツタが足場を侵食している。そこの手すりに手をかけて彼女は空を見上げていた。どこまでも広がる満点の星空。それを見つめながらあの時を思い出していた。そう『ゆきひら』に来た時のことを


「お前が瀬凪か?」
とある理由で彼女は大人たちに追われていた。逃げ出してもう8日が経つ。すでに彼女は空腹と睡眠不足で倒れる寸前だった
それもそうだろう。この8日間彼女は何も口にしていない。公園で水を飲んだくらいだ。いつ捕まるかわからないという恐怖から周りを警戒し続けまともに睡眠もとっていなかった
誰かに助けを求めなかったわけじゃなかった
けれど誰も彼女を助けてはくれない
手を差し伸べてくれたと思ってもそれは当時から美しい姿をしていた彼女を利用しようと考える輩や彼女に欲情する不埒な輩ばかり
残酷な大人たちに恐怖し人間不信ともいえる状況に瀬凪は陥っていた
当時彼女は6歳。完全に体が出来上がっていない状態でのこれはあまりに彼女にとって辛すぎた。身体的にも精神的にも
ただただ大切そうに、縋るように胸元にある子供には不釣り合いな銀色のロケットペンダントを握りしめていた
その日はもう日が落ちて夜空に月と多くの星々が瞬いていた
瀬凪は路地裏で自身の体を抱きしめながら座り込んでいた。もうその時には逃げ出してから9日間が経っていた。しかもこの時の時期は秋と冬の変わり目。まともな防寒着も着ていない、真っ白なワンピースを一枚着ているだけ
もう彼女は限界だった。歪む視界は意識が朦朧としていたからか、もしくはその大きな瞳に張る悲しみの膜のせいか、彼女にはわからなかった
彼女はもう眠りたかったのだ
もう何も見たくなかったのだ
この世界に絶望して、この社会に絶望して、そして人に絶望して
彼女はもう何も見たくなかったのだ
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