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君と並んで歩く未来

第6章 無法地帯


彼は熊のエプロンを身にまとっており頭には三角巾が巻かれていた
「いや仕方ないでしょ…」
「一色先輩が毎日の様に集めるから皆飽きちゃったんすよ…」
「飽きたなんてそんなわけないだろー?現に田所ちゃんは毎回出席してくれるじゃないか」
その言葉に田所が顔色を悪くし苦笑いを浮かべる。その様子を横目に見た瀬凪は彼女が好んで毎回参加しているわけではないと察した。そんなことは知らないのか彼は
「いいかい皆!ひとつ屋根の下で暮らす若者たちが同じ釜の飯を食う。これぞ青春!これぞ学生!!」
なんだか長くて面倒くさい話になりそうだと瀬凪は彼らから視線を外した。するといきなり名前を呼ばれそちらに振り向く
「というわけで、僕が2年の一色だ。『一色先輩』とそう呼んでくれ!」
差し伸べられたその手に創馬と瀬凪が順々に握り返す
「ようこそ極星寮へ!幸平創馬くん!朝比奈瀬凪くん!」
その後みんながどんちゃん騒ぎで暴れていく中瀬凪は部屋の端のほうにさり気無くはじけ皆の様子を伺いながら考え事をしていた
「(十傑…なんか創馬が知れば面倒なことになりそう…)」
そう、これからのことで創馬と十傑に何かしら問題が起こりそうだと思っていたのだ。創馬の性格からして手っ取り早くてっぺんを獲ろうとして十傑に喧嘩を売るとか…結果的に彼女の予想は当たるのだがまだ彼女はそのことを知らない。すると彼女の隣に誰かが座った。それに瀬凪は気づいて顔を向けると飲み物を飲んでいる伊武崎だった。しかし彼は何かしゃべるでもなくただちびちびと飲み物を飲んでいるだけ。瀬凪は首をかしげて彼を見る。すると
「何でアンタたちの歓迎会なのに主役がこんな端にいるの」
それを聞いて瀬凪は彼が一人で端にいる自分を気遣って隣に来てくれたのだと気づいた
「…なんだか着いていけなくて…」
「あー…確かにアンタは騒ぐタイプじゃなさそう」
「そうですか?」
「逆に違うの?」
「…そうですね…。騒ぐタイプではないかもしれません」
「だろ?」
そう言ったやり取りの中で彼はほのかに笑った。それにつられるように瀬凪も笑顔こそ浮かべてはいないものの表情をやわらげた
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