• テキストサイズ

君と並んで歩く未来

第4章 その料理人は笑わない


事件は田所が盛り付けようの皿を取りに、瀬凪が使った器具を棚に戻しに行っているときに起きた。創馬がある異変に気付いたのだ
「…あれ、田所、瀬凪…フタ開けた?」
その言葉に二人は否定の言葉を発した。肉を取り出すにはまだ早いのだから当然だ。その時創馬は別グループの男子二人がにやにやと意地悪く笑っているのを見つけた。それに何か気づいたのか彼は鍋のふたを開けた
「……!?な、何?この白い粉…」
田所は驚きに声を上げ、瀬凪は目を細めた。創馬は指でそれを掬い舌で舐めて確認する
「…塩だ!」
「な…!何で…!?ど、どうしようどうしよう!」
残り時間は30分。もう時間はない。田所は今度こそ絶望に陥った。しかしそれもつかの間、創馬が予備の食材を持ってきており、瀬凪は先程片づけた調理器具と別の鍋を持ってきていた
「え…」
「さ、やろーかね」
腕を捲る創馬。その隣では瀬凪が髪を三つ編みから高い位置で括りなおしていた
「え…え?創馬くん、朝比奈さん、でも、もう間に合いっこねぇべし…」
「あの先生はなかなか良いことを言うね」
その言葉に瀬凪が頷き言葉を続ける
「私たちは学生である前に料理人なんですよね」
創馬はハチマキを頭に巻き、瀬凪は括り終わったのか髪から手を放す
「料理は何が何でも出す!!瀬凪っっ!」
「うん」


「見たかあいつらの顔…」
「ああ!これで奴らはE確定だな!」
「朝比奈さんにはちょっと悪いけどな」
そう彼らが三人の鍋に塩を入れた犯人なのだ
「Aだ!次の組_」
シャペルの評価の声が耳に届き自分たちも仕上げに入ろうとしたとき
「次審査お願いしまーす」
聞き覚えのある声に驚き振り返る。そこには完成しているはずのない創馬達のグループがいた
「おあがりよ」
そう言って出されたのは見事なブッフ・ブルギニョン。それにシャペルはフォークを当てる
「!やわらかい…!あてたフォークが弾むようだ…!」
な、なにぃぃぃ!!
「君たちの組はアクシデントがあったはずだ。どうやって完成を…?」
彼の疑問に創馬は笑いながらあるものを取り出した
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp