• テキストサイズ

君と並んで歩く未来

第4章 その料理人は笑わない


「使ったのはハチミツ!煮込む前の肉に揉み込んで下味をつける時にも加えてみました」
ハチミツにはタンパク質分解酵素『プロテアーゼ』が含まれている。それが固い牛バラ肉に作用し短時間でやわらかく仕上げることができた
「で、でもどうしてハチミツが使えるって知ってたの…?」
恐らく調理の段階から気になっていただろうことを田所は尋ねる
「昔料理本見てたらパイナップルの果汁が肉を柔らかくするって書いてあったんだけど、パイナップルなんて丸ごと買う機会はそうそうねーからさー」
「同じ様に肉を柔くするものはないかって色々試したんだよ。ハチミツは保存もきくしダントツで使いやすいのさ!まあ、と言っても」
創馬はそこで一回言葉を区切って隣に静かにたたずむ瀬凪に目を向けた
「ハチミツが良いってこと教えてくれたのは瀬凪だけどな!」
溌溂とした笑顔で言われた言葉に田所とシャペルが彼女を見る
「…おじ様に教えていただいたの」
誰に言うわけでもなく目線を反らして彼女は言う
「まー食ってみりゃわかるよ。田所も、ほれ」
そう言って彼は田所にも皿を差し出した。言われるがままに口に運ぶ

C`estmerveilleux(素晴らしい)

そう言って二人は幸せそうな表情で笑った。そして周りは初めて見たシャペルの笑顔に大層驚いた
彼は皿にフォークを置いて
「幸平・朝比奈・田所ペア___Aを与えよう。ただ…」
「Aより上を与える権限を私が持ち合わせていないことが残念でならないがね…!」
そう言って先程は違うニヤリとした笑みを浮かべた。その言葉に瀬凪はゆっくりと瞳を閉じてわずかに口角を上げた。創馬はハチマキを勢いよくはずし
「御粗末!」
周りは編入生である創馬が自分たちよりも上の評価をもらっていることに動揺していた。ちなみに、創馬達の鍋に塩を入れた彼らはソースを焦がした挙句自分たちの鍋に塩を入れてしまいE判定を食らっていた

「おつかれっ」
創馬は軽快に笑って田所に話しかけた
「あの…今日はありがとう。朝比奈さんも」
彼らのやり取りを見ながら瀬凪は此処の生活も中々楽しいのかもしれないと思っていた
「うわあああああん!!」
田所が創馬の失敗作の餌食になっているのを見てやっぱり疲れるかもとも思っていた
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp