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君と並んで歩く未来

第4章 その料理人は笑わない


周りからの視線がこのグループに集まる中前に一人の年をめした男性が一人歩いてきた
「注目」
彼はホワイトボードの前に立つと生徒達を見渡した
「おはよう。若き見習いたちよ」
彼はローラン・シャペル。遠月学園のフランス料理の講師だ。
「厨房に立った瞬間から美味なる物を作る責任は始まる。それには経験も立場も関係ない…私の授業では『A』を獲れない品はすべて___『E』と見なす。覚えておくがいい」
顔をしかめて言うシャペルに田所はくらりと眩暈がした。それもそうだろう。彼女はもうEは獲れないのだから、獲ってはいけないのだから。そんな彼女の心中をシャペルが察すわけもなく授業は無情にも進む
「本日のメニューは『ブッフ・ブルギニョン』。フレンチの定番と言える品だが一応レシピを白板に記しておく」
「制限時間は2時間!完成した組から申し出なさい。では…」
始めるとしよう___Commencez a cuire.
その言葉に全員が動き出す。田所は深呼吸して創馬と瀬凪を見る。始業式であれだけのことを言っていたのだから料理の腕も確かだろうと思いチラリと視線を向けると
「ブッフ…ブル何?」
と驚くべき言葉を発していた。田所は絶望したかのような顔をした。しかし神は彼女を見捨てていなかった
「『ブッフ・ブルギニョン』フランスの牛肉を煮込んだ料理のこと」
と創馬に教えていた。その様子に田所は救われた。少なくとも瀬凪は大丈夫だと

調理が進みあとはソースづくりと今煮込んでいる牛肉を取り出すまでになったとき。田所は鬼気迫った顔で鍋を見つめていた。瀬凪はそんな彼女に鍋は任せ皿洗いをしていた。最初は田所が遠慮していたが無理やり皿を洗っている。しかし創馬は
「瀬凪ー!田所ー!見ろよ!調味料の種類すげーなー」
学校の設備や材料の豊富さにはしゃいでいた。それに田所は顔色をさらに悪くし祈は今日何度目かの溜息を吐いた。そんな彼女たちを悪い顔で見ている存在がいた
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