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君と並んで歩く未来

第1章 果てなき荒野


その言葉に意を決した様にフォークを手に持ちローストポークに伸ばした。ゆっくりとフォークに突き刺した其れを口に運ぶ。

「(噛み締めるたびにじっくり焼かれたベーコンの香ばしい肉汁がたっぷりあふれてくるっ__)」
その味に、肉汁に反応している彼女に創真はほくそ笑みグイッと顔を近づける
「旨そうに味わってんなぁオイ。アンタがバカにした店の料理だぜ?」
勝ち誇ったように言う彼に悔しそうに顔を歪める彼女。それらを横目に今まで静かにしていた瀬凪が口を開いた

「そのローストポークは、ジャガイモをホクホクに蒸かしたものに脂を吸いやすい繊維質のキノコ類を刻んで練り込んであります。」
それに厚切りベーコンを巻き付けオーブンでじっくりと焼き上げる。そうするとベーコンは脂が抜けカリカリになりジャガイモが豚の旨味と脂をすべて受け止める__
「外はカリカリ中はジューシーな官能的な食感が生まれるんです」
彼女の説明に男達が想像したのか涎を垂らす。瀬凪の言葉を引き継ぐように創真が喋る
「昔客に出すポテトサラダを作っていた時のこと」
盛りつけをミスって別の料理の肉汁がポテトに染みてしまった。そこからこの料理を閃いたんだ
「失敗作からね__」
その言葉に悔しそうにする峰ヶ崎は
「…だから何よ。こんなもの肉料理とは呼べないわ…!」
彼女は思っていた。それでももう無理だろうと。彼女は感じてしまったのだから。一度でもその味を知ってしまえばもう逃げられない。その___

"ゆきひら"の味からは___!




あの後無事に事態は収束しゆきひらは存続することが可能となった。自信はあったものの少しの不安を持っていた瀬凪はホッとしていた

今は創真は看板の掃除で外に出ており、瀬凪は荒された厨房の掃除と在庫が切れてしまった肉の発注をしていた

「___はい、そのような感じでお願いします」
電話を切った瀬凪は溜息を零した。赤字ではないが無駄な出費をしてしまった。その事が彼女を憂鬱にさせていた。だが、ずっとそれでうだうだしていても時間の無駄である。そう考えた瀬凪はモップを手に厨房の掃除に向かった。外では幸平親子が一悶着起こしていることに気付かず


数週間後__瀬凪と創真はある建物の前にいた。こうなったのには遡ること数週間前、幸平親子の一悶着にあった
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