第29章 大切な心
~例の髪の毛を切っている時(857ページ参照)、フレイヤ視点~
夢うつつで寝た時、悪夢を見てか…心が荒れているのを感じた。
ケイト『どうしよう…
どうしよう……
人間が、憎くて仕方ないんだ。大人が、信頼できない。
無理やり、押さえ込んで…それでも…ダメなんだ。殺したくて、堪らない!
殺したいと!何度も疼いて疼いて止まってくれない!!
誰も、助けて、くれなかったくせにって!!育ての家族は護って、くれたのにっ;
ごめん…ごめん…どうしたらいいか…わかんないっ』
彼女はまるで、雨に撃たれているかのように今にも泣きそうな顔をしていた。
見ただけで伝わってきた。張り裂けそうな苦しみが暴れ回っていることが。
ケイト『何で…何で、私を…私なんかを、好きなんかでいてくれるの?』
フレイヤ『あなたのことが大好きだからよ』←切り続けている
ケイト『私は!
もう…前の時とは違う。
始祖神の時とは、もう…全然違うんだ。
……こんなにも…憎しみで、汚れてしまった』
フレイヤ『変わってないわよ』ぺちん
左頬を軽く叩いた。
フレイヤ『だって、あなたがそんなに苦しんでいるのは…知らない人のことが、大事だからでしょう?
知らない誰かよりも自分を優先しているのなら、とっくに殺して回って高笑いしているわ。
それほどの憎しみにとらわれたとしても…あなたは、人の為に自分を必死に抑え込む。
常人なら既に狂って、殺人鬼になっていてもおかしくないわ。
それでも……あなたは、その道を選ばなかった。
あなたは、変わってないわ。
だって、それだけ苦しんでいるのは…人の痛みを考えてのことじゃない』
ケイト『っ!(瞠目&息を呑む)
…ぅっ;』ぎりっ&ぽろぽろ
フレイヤ『あなたはいつもそう。
何度も何度も感情に飲まれて…でもそれ以上に、人の苦しみや痛みを思い遣って…知らない誰かのそれを考えて、寄り添うことが出来る…
どれほど馬鹿を見ても、憎しみに縛られても、世の中の歪みにとらわれても、決してやめようとはしない。
私は、そんなあなただから惚れたのよ』微笑&なでなで←耳に囁きかける
ケイト『ひっく…ぁっ;;』ぼろぼろ
ケイトは左手で両目を押さえ、それでも涙は止まってくれなかった。
手櫛でときながら耳元で囁くと、彼女の魂は喜びを露わにした。