第29章 大切な心
ケイト「フィン…本当は、憎くて仕方なかったよ」
フィン「ん?」ケイトを見やる
ケイト「この世の全ての人間が、憎くて憎くて仕方ない。
手当たり次第に殺して回りたいほどに、私の中の憎しみは大きい。
正直言って…この世界ごと全て消してやりたいぐらいに、想ってたよ」ギリリ
そうケイトは歯ぎしりし、拳を固く握り締めて遠くを睨視した。
ケイト「でも……結局はさ…ブレーキをかけちゃうんだ。
された相手も、その縁者も…苦しむのが目に見えてた。
私は、そんな姿を見たくはなかった。それを見て、その上で自分の幸せを味わったり求めることなんてできないんだっ(涙目)
それが…私なんだ。
愚かで、馬鹿で…どうあっても、その生き方だけは…変えられない。
愚直な、大馬鹿野郎なんだ(天を仰ぐ)
何度も何度もブレーキかけて…何度も何度も泣いて…その憎しみに抗って……
その度に苦しみもまた憎しみ以上に沸き上がって……どうしたらいいか、わかんなくなった。
フレイヤ様と再会した時、理由を聞いたんだ。
「何で…始祖神の時と同じように、好きでいてくれるの?
私はもう…こんなにも、憎しみで汚れてしまっているのに」って…
そしたら、なんて言ったと思う?」
フィン「ンー…その抗おうとする心こそが…じゃないかな?」
ケイト「ふふっ^^
うん…何で憎しみが湧き上がる度、こんなに苦しくなるのかわからなかった。
でも…それでも……言われた言葉のお陰でわかったんだ。
私は…何ら、変わってなかったんだってさ。だから…苦しいんだって」
アル「お母さんを…殺す…?
ふざけるなあああ!!!!」
アルを中心に魔法円が展開され、白い魔力の塊が膨張し、ひび割れ、芽吹き…龍の形となって脈打つ。
自己の『魂』という名の力が炸裂し、ケイトを護るよう展開されたそれは…魔術師を吹き飛ばした。