第29章 大切な心
ディ「うん!…それはわかる」にっこり
そのケイトの言葉にディは頷きながら笑いかけた。
ケイト「私は、そういった人達だけじゃないと思っていた。
そう考えることで、希望を抱くことで、捨てないことで…目の前の傷に負けないようにと思ったんだ。
目の前に、助けようとする人なんて…そんな人なんて…一人もいなかったくせにさ。ははっ(嘲笑)
自分一人の抱く正義が全員そうだと思う奴ばかりだった。
私は間違ったことはしていない。そうはっきりと言い切れるよ。自分にできることを、きちんと精一杯やった。
家庭内における肉体的身体的暴力に伴う環境でできないこと、障害を…理解しようとなんて、されなかった。
できて当然な人達は群れを組んで囲っては口々に散々に責めて、私一人がおかしいのだと思い込むよう独りに追い込み、自らを殺すよう罵られ続けた。
神様も同じことを想ってか、愚突猛進なんてスキルを与えてきたしさ(肩すくめ)
くっくっ…
本当に、愚かだよな。私は……(天を仰ぐ)
どれだけ相手のことを考えてたって、自分が取ろうとする行動で得た傷で苦しむのが目に見えてて…
相手が苦しむ姿を見るのが嫌で、仕方なくって…どれだけ人のことを想って必死にブレーキかけてたって、それに対しては『一切』評価しないんだから。
そりゃそうだ…自分にとって不利になるんだから。
だからこそ処刑されてよかったと心底思う。
…けど…若干複雑なんだ。
末代所か何百億年経とうがその魂を祟りたいほど憎んでたのに…
いや、今も憎くて憎くて仕方ない」眉間に皺を寄せる
ディ「?よくわかんない。
でも…お母さんの気持ち、なんとなくだけど解る。
両親も、姉も、育ての家族も、皆…皆、その街の人達に殺されたんでしょ?
その挙句…自分が仕返しをしなくて普通だって、自分達だけは被害者なんだからそんな目に遭わなくて普通なんだって、「死んだように生きてろ」って…散々嫌がらせをずっと受けてたって…何年も何年も」
ケイト「…その通りだよ。
だから…信頼できる人かそうでないか、きちんと見極めないといけない。
相手の持つ障害も経緯も全て無視して、自分の抱くそれを押し付ける人間…それは、最早正義とは言わない。
ただの、「自分に合わせろ」という「押し付け」だ。
正義ってのは…人の育った環境に基づいて変わるものだ」