第29章 大切な心
どれだけ求めてもいないんだ。どこ探してもいないんだ。
死をそう語られた。その意味が、やっとわかった。
嫌だ…嫌だよっ……
もっと一緒に居たい…それだけでいい!
それだけでいいから!居なくならないでっ――!!
涙ながらに想ったことは、皆も持っているようだった。
それでも…その想いが報われることもない。
その時、僕はお父さんに懇願した。
それは、過去への時間渡航魔法。
原理は簡単、自分の周囲だけの時間を巻き戻すだけ。
周囲の時間ごと標的を止めて、その間に倒すそれと同じ原理だ。
周りは反対した、でもお父さんだけは了承してくれた。
お母さんに会って、学べばいいとも言ってくれた。
「そうでもなければ折り合いなどは付けられないだろう。初めて味わう人の死なのだから」とも。
アイズさんも行こうとされたが、二人いれば混乱すると止められていた。
そしてディがいない内に、見送られながら魔法で移動した。
過去でのお母さんはでかかった。
そう言えば身体に掛けた龍変換魔法による龍神化から戻る為に解除魔法を作って自身にかけて解いたって聞いた。
その時、長年身体にかかり続けていたクリエイトの『ヒューマン並に大きくする魔法』も解けたって言ってたし…
Lv.9にランクアップするきっかけのそれはまだ、もう少し先のようだ。
一番嬉しかったのは…お母さんに会えたこと。
「ああ、お母さんだ。変わってない!」って思えたこと。
おまけにお父さんも変わってなくっておかしかった。
まさかディがついてくるなんて思いもしなかったけど…;
それでも…ほんの数時間、一緒に居ただけなのに…
とても、楽しかった。
とても温かくて、優しくて、穏やかで…
こんな日々が、ずっと続けばいいのにとも思った――