第28章 子達の来訪
心も感情も殺し、麻痺した状態でなければ…当時は生きてこれなかった。
だからこそフラッシュバックに陥る度、激しい混乱に陥る。
それが普通だった頃の心と感情に戻り、自らに当たって安心感を得ろうとする。
そこが一番の問題なんだが、本人はそれほど重要視していない。
それよりも人を傷付けないことを第一としているからか、全くもって見当違いなことに気を付けている。
まったく…厄介なものを残してくれたね、あの街の連中は。
ケイトの傷付けまいとする行動をよく見ようともせずに、何様のつもりだ?
口を開けば傷付けるそれを徹底的に取り除き、傷付けまいと気を回し過ぎている。
それも怯えているかのように、周囲の取る行動や反応に対して過敏に反応、及び注視してしまっている。
内心で常に些細な反応にもびくついているのが見えて、どれほど徹底されてきたのか…否が応でも察せられた。
これをどう見たら悪と見えるのか…それを傷付ける己を正義とできるのか、未だに理解に苦しむばかりだ。
だからこそ、街を滅ぼしたかったんだが…ケイトが猛反対しているから手も出せない。
無理やり形を合わさせ、己という形を捨てさせ…それが正しいと、街の人達は本気で思っている。
それが個人を蔑ろにし、人権そのものを無視しているという行為だというのに…自らが被害者だと言い放つ始末……←584ページ参照
ああ、殺してしまいたい。
フィン「はあああっ」
友もいない、護ってくれる人もいない、家族も傷付けてくる人達、姉は立ち回り上手に逃げる…
唯一、大切にしてくれたのが…一人の人として受け入れ、扱ってくれたのがヴェルフィンとその家族だった……
楽しい時間など一度として無く、兵士…後に教えてくれたが精霊王の森の守り人ならぬ守り動物に鍛え上げられていた。
妹が生まれ、姉となり、大きくなっていき…ようやく楽しいと思えてきた、生きようと思えた。
そうして頑張っていたが、それさえも殺されて奪われた。
闇派閥も関わっていたそうだが、街の人達が先導してのことらしい。
あそこまで来るともう弁護のしようがない。
悪いことをしたんだろうといくら言われようと、それ以上の悪意を持って悪事をケイトへしている時点で、言い逃れなどできるわけもない。
街に居る彼等彼女等はれっきとした犯罪者だ、それも無自覚の。