第27章 変化
「ヴウウウウ」待て、行くなよ
ふらつきながらも近寄り続けてくる中、ドンが間に割って入る。
ドン「きゅ!」
フィン「!ドン?」
ドン「ヴウウウウウウウウ!!!」
初めて見せる威嚇の表情、それにミノタウロスは止まった。
そして唸ること数度、会話するかのように声を発する中…
あることを察したのか目を見張った。
「…ヴォオ?」お腹の中に居る?
ドン「きゅ!」こく
「……ヴォヴォヴウウウウ」楽しかったと、それだけ伝えてくれ
彼女を穴が差すほど見入った後、背を向け去っていこうとした。
未だ槍を胸に刺したまま。
ドン「きゅ!きゅううきゅ!」待って!その武器はケイトじゃなきゃ使えないよ!
「ヴォ?」え?そうなの?
くるっ←振り返る
「ヴォオオ」ああ、(刺さったままなのを)忘れてた←あわよくばもらおうとしていた
ぐいっ
ずぼっ
ぽいっ
からーん
ミノタウロスはドンへ振り返った後、パイオニアを掴んで引っ張って引き抜き、僕の足元へと投げ付けた。
乾いた金属音が響いた後、ミノタウロスは再び背を向けて下の階層へと続く道を歩いていった。
ずん!ずん!
ふら付いている足取りながらも深層へ向けて去っていった。
こうして…ミノタウロスとの戦いは幕を下ろした。
後に、彼は好敵手を求めて戦いを挑んでいたモンスターなのだとドンを介して知った。
ドンはコイネーの文字を覚え、会話ができるほどになっていたことによるものだ。
フィン「異常発生モンスター、か…」
アイズ「フィン!!」
フィン「ああ、今行く!」
槍のままのパイオニアを拾って脇に挟み、ケイトを背負い直しながら去っていった。
深層へ追いやったとドンを介して『神の鏡』で知らされたそれに伴い、ホームへと帰還する最中に凱旋と称して周囲から称賛を受けた。
だが、完全に倒したわけではない為、晴れた表情を浮かべる者は一人としていなかった。
その血濡れのミノタウロスはLv.8よりもさらに格上と断定され、手出し禁止とギルドから直々に各ファミリアへ伝達されることとなった。
ホームへと帰還した後、ステイタス更新をしてみると、『ケイトを除いた』フレイヤ・ファミリアも含めて全員がランクアップしていた。
念の為、気絶したままのリヴェリアとケイトは治療院へと連れて行くことにした。