第21章 *初めての…
ケイト「返す言葉もありません…;」ずううん
フィン「この際だ。隔たりはなしにしよう。
はっきりと言わせてもらうけれど…君のそれに、納得したわけじゃない。
呑み込みはした。君の言わんとしていることもわかるし、理解もしている。
が、それを誰もが受け入れているわけじゃない。特に僕達やロキはね…
今も、街の人達はそれがさも当然とばかりに過ごしているだろう。
自分達が被害者だとね…
切迫した家庭環境で、訴えかけてもなお嘘つき呼ばわりするだけじゃ飽き足らず…
精神的に潰れ、記憶喪失を引き起こすまで追い詰め続けた。いや、『そうなってもなお追い詰め続けている』の間違いか。
それが当然?普通?先に嫌な思いをさせたから?
そんな主張をする輩に「ふざけるな」と言いたいんだよ、僕達は。
君自身、自ら望むことなど滅多にない。
そんな君の主張だから、『仕方なく』君の幸せを願って踏みとどまっているだけだ。
そりゃ生きていれば誰だって意見も食い違う。
価値観も考え方も、環境も誰もが違うのだから当然だ。
しかし彼等彼女等は、君ばかりを何かにつけて目に付けた。
君は逆なら嫌だというそれは、結局は独り善がりでしかない。
もっとひどい目に遭うのが普通だった君にとって、嫌な思いは決してさせたくなかったんだろう。
さぞかし彼等の目には滑稽に映っていただろうね。何をそんなに怯えるのかと…
そしてどれだけ理不尽な目に遭わせても、どれほど悪口雑言を投げかけても抵抗しないそれを見て、サンドバックにしたんだろう。
挙句の果てに父親の度重なる暴力や暴言、誰に助けを求めようとも…無駄だった。
そうして失意のどん底の中で、死んだように生きていた。毎日を…楽しい思い出さえもなく……
もし仮に僕と君が逆だったとする。
その場合でも、君は…同じことが言えるのか。よく考えて欲しい」
ベッドの正面に座るケイトを前に、僕は真っ直ぐにその目を見ながら再度語りかけた。
君がやっている行動の意味も、される側の気持ちも…やはり、されなければわからない。
特に、考えなければ…ずっと、気付かないままだろう。