第19章 宴
フィン「ケイト…」ぽつり
あの時(両親の時)は全てが遅過ぎた。
もう一度、始めからやり直せるのなら…
そう思っては、涙が止まらず零れ落ちていった。
しかし…そんな両親の時とは、今は違う。
今はちゃんと近くにいる。
知れてよかったと…心底、心から思った。
共にはしゃぐかのように話しながら歩くケイトを尻目に、僕は考え込んでいた。
きっと…君に惚れたのは、惹かれていたのは…心が君という人を見抜いていて、求めたからだ。
同族だとわかっていたのだろう。また…両親と同じように、『希望』になり得るパルゥムだということも……
ケイトの英雄譚では何故か、僕とのこのやり取りも経緯も書くつもりらしい。
僕の本当の名は伏せて…
読んだ人は何故か、僕とケイトが共に居るのを見る度に温かな眼を向けるようになった。
その中には「愛されてるなあ」と涙ぐむ人までいたわけだが、そこはツッコまないでおこう。
それから、死んで欲しくないからこそ庇うのをやめる目的で発言したのだが…
ケイト『フィンが傷付くってわかってて見殺しにするぐらいなら死んだ方がマシだ!!』←665~667ページ参照
あの時…心底困った。だが、困ったはずなのに…それと同時に、とても嬉しかった。
僕の気持ちを考えてもなお、それでも…君は僕が傷付くのを由としなかった。
それが…何でかな、嬉しくて仕方なかった^^//←699ページ参照
今では…その理由が、よくわかる。
謎も解けた。
きっと僕は…両親との続きを、君との続きに重ねている。
君との日々を過ごすように、両親とも過ごしたかったんだろう。
置いてきた理屈が、想いが、感情が…色めき立っては止まらない。
『ありがとう』という想いが、あの時(639ページ参照)のように再び止まらなくなった。
フィン「ケイト…ありがとう」ぽつり
ふっと笑みが零れ落ちる中、通り過ぎ様に言い
これらの想いが通じるように願いながら念じた。
「強く念じるだけで自動で思念伝達魔法の効果で伝わってくるから」と、説明を受けたからこそ…
それから僕は、想いを受けて耐え切れずにその場で泣きじゃくるケイトを抱き寄せた。