第19章 宴
ケイトからそういった思念が伝わってきたのはその日、その時だけだった。
魔力も未だない状況で伝わってきた想い…
それを無下にする気は、僕にはない。
生きて帰ってくると言った。待っててと言った。
それでも涙が止まりようがなかった。
久しぶりに聞いた声に、自分の抱く想いに気付かされた。
再燃したそれに、為す術も無く身を焦がされた。
好きだ。大好きだ――止められない。
愛している――今からでも…遅くはないだろうか?
また…また、やり直せるのならっ
フィン『ケイト――っ』ぎゅうううっ
震え泣く中、それは何時間も続く…
耳元で空気を送り込む音が聞こえてくる。その中で懸命に戦っている姿が見えた。
両親のように、身を挺して護った姿が…
フィン『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
両親の時のように、無様に泣き叫んだ。
そうして6時間ほど泣き叫んだ後に…ようやく、涙は涸れた……
夜に訪れたはずの場所に、朝日が差した。
最初こそ決意が鈍ったのかと動揺した。その程度かと抑え込もうともした。
それでも…できなかった。それほどに…君に惚れた、心の底から今も惚れ込んでいる。←698ページ参照
ならば…今懸命に生きようとしている彼女に何かするのは野暮だ。
精々できるのは手を握り締めること、見守ること、頬や頭を撫で声をかけること、そして何より…信じること。
それ以外の時間は全て、今まで通り団長としての責務に勤めよう。
そう思い至ったのは、オッタルが訪れる少し前の夜更け。←545ページ参照
などではなく、オッタルが訪れた0時過ぎから5時間経った後の涙が涸れて決意した時だった。
それまでは僕の泣き叫ぶ声を聞いたアミッドが、オッタルの立ち入りを止めてくれていた。
その時を境に、僕は前を向いてケイトが生きて帰ってくることを信じることと、職務を全うすることを選び、同時に彼女に誓った。
できることさえもできなくなれば、仕事に手も付かず放り出し続けていれば
その様子を見た彼女に軽く罵倒され、笑いながらも鼓舞してくるだろうと。
結果として、『死にはしない』『僕の惚れた女性は、そんなに柔じゃない』と思うに至った。←541ページ参照