第19章 宴
『まただ…また、失う?』
その想いが、涙を止めさせてくれなかった。
今度こそはと、強く願った。強く想った。
あんな光景は…最も大切な人に庇われて死ぬのは、二度とごめんだと……
だと言うのに、降って湧いた『死』――
何度も心臓が止まる、呼吸が止まる、その光景に…言葉に言い表わしようがないほどの激情に支配された。
心に穴が開く。
ケイトがいたことで得た光明が暗闇となって、心を滅茶苦茶にかき乱す。
常に冷静さを保っていた感情が色めき立ち、ひたすらに自分を責めて涙が零れ落ちていく。
それごと含めて感謝できるようになるのは、先の話だ。←639ページ参照
見舞いに行く度に、病室に入れてもらう。
白い清潔なベッドに、ケイトから見て左側に備え付けられた椅子に座る。
もう遅過ぎる――嫌だ
もう、遅い――嫌だっ!
失ってからでは――黙れ!!
何度も何度も、頭の中で過ぎっては否定する頭。
失いたくない…もう二度と、奪われたくないっ;;
あの時…両親の時では何もかも遅過ぎた。でも今は違う。
まだ、生きてる。
ケイト『『生きて――』』
フィン『!ケイト!?』がばっ!
次の瞬間、ケイトの声が聞こえた。
しかし口は動いてはおらず、思念伝達魔法(424ページ参照)だと察した。
ケイト『『生きて――帰って、くるから』』
その瞬間、あの時の言葉がよぎった。『待ってて』という言葉が…←532ページ参照
その時、頭を抱き寄せて泣いていた。
フィン『ケイト……』ぎゅうっ
こんな気持ちは、初めてだった。
他人に抱く感情も、こんなにも愛おしいと想うこの気持ちも…
君に出会わなければ、知らないままだった。
捨てたはずだったのに…自分の全てを小人族に捧げると決めたのにっ……
あの決意も、42年間も…君への愛には、この『想い』には勝てなかった。
フィン『ケイト……
好きだ……大好きだ……』
両親の時は、全てが遅過ぎた。
もう一度…もう一度やり直したい……いくらそう願っても、無理だった。
フィン『頼む……
フィアナ…彼女を、連れて行かないでくれっ』ぎゅううう
あの両親を失った時のように、涙でぐしゃぐしゃになりながら…願った。
何度も願って、信じることを択んだ。
君(ケイト)の伴侶として――